9月20日から後期の授業が始まりました。新型コロナウイルスの影響によって、遠隔授業が当面続きますが、昨年からの一年半で、教員も学生も遠隔授業に慣れてきて、様々な形で学習価値の高い授業を作り出しています。
振り返ってみれば、新型コロナウイルスは、学校教育の中身だけでなく、経済の情勢や雇用と労働の体制など、一般社会の様々な局面において変化を起こし、これまでの常識を覆してきました。こうした劇的な変化を考えた時に、私はいつも自分の研究(素朴理論)に創発的で且つ指導的な役割を果たした一冊の本を思い出します。それは、カール・R・ポパーの『客観的知識―進化論的アプローチ―』です。
ポパーはこの本で、科学、哲学、合理的思考が、すべて常識から出発し、批判によって進歩するという考え方を、「われわれはあやふやな出発点から発足し、不安定な基礎の上に建設をするのである。しかし、われわれは進歩していける。われわれは時として、ある批判の後に、自分たちが誤っていたことを悟りうる。われわれは自分たちの誤りから、自分たちが誤りをおかしたということの洞察から、学ぶことができる」(41頁、引用)と説きました。ポパーの考え方を援用してみれば、常識と非常識の境界線があいまいになった今日の社会状況は、まさに新しい知識や知見が作り出される状況でもあります。
様々な局面で生じた「常識―非常識―新常識」の変化から、社会の一番理想的なあり方を考えましょう。
呂光暁
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